メンタルヘルス対策
IT化の進展や長時間労働、極端な成果主義の導入などにより、職場のストレスはかつて経験したことがないほど高まっています。自殺者は毎年3万人を超え、社会人の6人にひとりはうつ病などの精神疾患を抱えているともいわれています。会社は雇用契約上の安全配慮義務を負っており、メンタルヘルスについてもその義務を負います。また、平成18年に施行された自殺対策基本法では、事業主に対し、雇用する労働者の心の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるよう努めることを定めています。
長時間労働による精神疾患が労災と認定されるケースが増加しています。残業時間と精神疾患の因果関係が指摘され、会社の管理責任が問われます。また、従業員の精神疾患は、その一個人の問題にとどまらず、事業場のモチベーションや生産性の低下、人間関係の悪化などの弊害をもたらします。万が一にも従業員が自殺などした場合には、訴訟に発展することも考えられ、損害賠償や弁護士への報酬など莫大な経費となります。
メンタルヘルス対策は会社の重要な労務管理の一環として行われなくてはなりません。
メンタルヘルス対策の進め方
①セルフケア 社員自らが行うストレスへの気づきと対応
②ラインケア 管理監督者が行う職場環境等の改善と相談への対応
③社内の専門スタッフケア 社内の産業医等による専門的ケア
④社外の専門スタッフケア 社外の専門機関による専門的ケア
メンタルヘルスの問題は、体の健康と異なり外部からの認識が困難であることや、その原因や程度に著しく個人差があることです。なかにはメンタル疾患の要因が会社以外である場合や、さぼりや怠けの口実として利用されるケースもないわけではありません。
また、その対策には医学的な側面だけでなく法的な側面、経営的な側面からのケアが必要であり、専門的な知識を要することから人材の不足している中小企業にとっては大きな負担となることから、メンタルヘルス対策がすすんでいない原因となっています。
中小企業がメンタルヘルス対策に取り組めない理由として、「専門スタッフがいない」を挙げた企業が最も多く、次いで「取り組み方が分からない」、「必要性を感じない」、「労働者の関心がない」という順番になっています。
メンタルヘルスケアの具体的進め方
①メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供
②職場環境等の把握と改善
③メンタルヘルス不調への気づきと対応
④職場復帰における支援
メンタルヘルスケアは継続的かつ計画的に実施することが基本であり、具体的な推進は保健スタッフや人事労務管理者等事業場内の関係者が相互に連携し、産業医等事業場外の専門家の支援を活用し推進することが効果的です。メンタルヘルスケアにおいては、ストレス要因の除去又は軽減や労働者のストレス対処等の予防策が必要であり、そのためにも、ストレス及びメンタルヘルスケアに関する正確な知識についての教育研修は重要です。また、万一、メンタルヘルス不調に陥る労働者が発生した場合、早期発見による適切な対応を図ること、休業者が円滑に職場復帰し就業を継続できる体制をつくっておくことが大切です。
メンタルヘルスに関連する労働法令
労働基準法 残業時間の制限・解雇の制限・健康診断の実施
労働者災害補償保険法 業務上の災害補償
労働安全衛生法 職場の安全衛生管理・労働者の健康管理
メンタルヘルス対策としての労務管理
メンタルヘルス疾患による労働者からの損害賠償請求や不当解雇による訴え等に対し、会社は適切な労務管理によりリスクマネジメントを行わなければなりません。具体的には、定期健康診断の確実な実施や就業規則の休職規定の見直し等が挙げられます。また、メンタルヘルス担当者を決める等社内体制を整備することも重要です。
就業規則の整備
健康診断に関する規定
休職に関する規定
復職に関する規定
解雇に関する規定
メンタルヘルス対策に社会保険労務士をご活用ください。具体的なメンタルヘルス対策から就業規則の整備等によるリスクマネジメントまで、体系的に社内体制を構築することができます。また、外部の専門家を活用することにより、会社がメンタルヘルス対策に積極的且つ中立的な立場で取り組んでいることをアピールすることができます。
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