ユニオン(合同労組)対策
合同労組とは、一般的な会社内の労働組合とは異なり、労働者が個人で加入できる労働組合のことをいいます。合同労組の特徴として、関連のない様々な会社の従業員により構成されている点が挙げられます。また、正社員以外のパートタイマーや管理職がメンバーとなっていることも特徴的です。
不当解雇や未払い残業代の件で、聞いたこともない合同労組から団体交渉の申し入れがあると、会社としてはどう対応していいのか分からないのが現実です。これを無視したり、団体交渉を拒否したりすると、不当労働行為になる場合があります。合同労組としても、まったくのいいがかりで団体交渉の申し入れをしてくるわけではないので、これに対しては原則として誠実に対応すべきです。
団体交渉の申し入れは、団体交渉申入書という形で郵送やファックスで送られてくるのが一般的です。それには、交渉内容だけでなく日時や場所まで指定されていますが、会社としての都合もあるわけなので、一方的に応じる義務はありません。法的に応じなければならないものと、合同労組の要求にどこまで応じなければならないかは、労働問題にくわしい弁護士や社会保険労務士に相談すべきです。無条件に要求に応じてしまい、会社に不利な労働協約を締結させられたというケースがあります
労働協約とは、労働組合と使用者またはその団体との間の労働条件その他に関する協定であって、書面に作成され、両当事者が署名または記名押印したものです。労使双方が労働条件等について署名または記名押印したものであれば、議事録でも労働協約となります。 労働協約は、3年を超える有効期間を定めることはできません。3年を超える有効期間の定めをした場合は、3年の有効期間の定めをしたものとみなされます。有効期間の定めがない労働協約は、90日前に予告をすることにより解約することができます。
団体交渉を行う場所として、合同労組の事務所を指定する場合があります。組合員という理由で数十人と交渉を行う羽目になる場合があります。会社内でという要求もありますが、関係のない従業員が動揺するケースもあるので極力避けるべきです。時間貸しの会議室であれば、交渉が多少エキサイトしたとしても問題はないでしょうし、あらかじめ時間が設定されているので、長時間の交渉を避けることができます。団体交渉の場所は。原則として労使双方の合意によります。
団体交渉には、必ずしも代表者が出席する必要はありませんが、総務部長等一定の権限をもっている者でなくてはなりません。人事権も何もなく、合同労組からの質問にまったく答えられないようでは、それ自体が不誠実団体交渉として不当労働行為に該当する場合があります。
団体交渉のとき、合同労組が議事録等を持参し、署名押印を求めてくる場合があります。タイトルは議事録であっても、労使双方が署名押印することにより、労働協約としての効力が発生する場合があります。議事録の内容が会社に不利であるケースを想定し、安易に署名押印すべきではありません。いくら合同労組といえども署名押印を強制することはできないので、一度持ち帰りしかるべき専門家に相談すべきです。
会社としては、面識もない合同労組の要求に対し、原因となった組合員と直接して解決を図ろうとする場合がありますが、これは労働組合に対する支配介入行為として不当労働行為となります。また、組合員に合同労組からの脱退を促したりするのも同様でので、絶対にやってはいけません。
会社が不当労働行為を行った場合には、合同労組は都道府県労働委員会に不当労働行為救済申立を行うことができます。都道府県労働委員会は、使用者委員、労働者側委員、公益委員により構成されます。都道府県労働委員会は、不当労働行為救済申立書の写しを会社に送り、会社はそれに対する答弁書を提出しなくてはなりません。
労働組合法には、不当労働行為として次の行為をしてはならないと定められています。
① 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること、ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
② 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むこと。
③ 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
④ 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立に係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。
ユニオン(合同労組)から団体交渉の申し入れがあった場合は、至急、当事務所にご連絡ください。当事務所においては、団体交渉の事前準備から団体交渉の立会いまで行います。また、自社で対応することが難しい場合には、労働問題に詳しい弁護士のご紹介をいたします。