高年齢者の雇用
高年齢者雇用安定法
高年齢者雇用安定法では、原則として、希望者全員を65歳まで雇用することを義務づけています。
1.定年年齢の引き上げ
定年退職の年齢を一律に65歳とか70歳等に定めるものです。
2.定年制の廃止
定年制を廃止するので、希望すれば何歳まででも働けるという制度です。
3.継続雇用制度の導入
現に雇用している高年齢者を、本人が希望した場合、定年後も引き続き雇用する制度で、次の2つに分けられます。
再雇用制度 : 定年年齢でいったん退職扱いとし、新たに雇用契約を結ぶ制度
勤務延長制度: 定年年齢で退職扱いとせず、引き続き雇用する制度
継続雇用制度は、原則として希望者全員を対象としなければなりませんが、企業の実情に応じてやむを得ない場合は、労使協定を締結した上で、対象者の選定基準を設けることができます。
労使協定とは、使用者が、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、また、それが存在しない場合はその事業場の労働者の過半数を代表する者との協定です。労働者の過半数を代表する者については、投票・挙手などの方法で、正当な手続きを経て選出されることが必要です。
高年齢者雇用コンサルティングサービス
65歳までの継続雇用対策
高年齢者雇用安定法にもとづき、定年延長や再雇用制度を導入するためのアドバイスをいたします。
制度導入に伴う就業規則の改定、再雇用規程の作成、人事制度の変更などのお手伝いをいたします。
高年齢社員(60歳以上)の賃金設計
在職老齢年金
在職老齢年金とは、60歳以上で在職し厚生年金保険の被保険者となっている者に支給される老齢厚生年金のことを指します。
給与の額に応じて年金の全部または一部が支給停止となります。
60歳以上65歳未満と65歳以上70歳未満では支給停止額の計算方法が異なります。
60歳台前半の支給停止額の計算方法(平成23年4月1日現在)
総報酬月額相当額と基本月額 | 支給停止額 | |
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下 | 全額支給 | |
総報酬月額相当額が46万円以下 | 基本月額が28万円以下 | (総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2 |
基本月額が28万円超 | 総報酬月額相当額÷2 | |
総報酬月額相当額が46万円超 | 基本月額が28万円以下 | (46万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-46万円) |
基本月額が28万円超 | 46万円÷2+(総報酬月額相当額-46万円) |
※基本月額=老齢厚生年金額(基金代行部分を含み、加給年金額を除く)÷12カ月
※総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の総額÷12カ月
65歳以上70歳未満で厚生年金保険の被保険者となっている場合の在職老齢年金は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が46万円を超える場合、超えた部分の1/2が支給停止されます。46万円以下の場合は全額支給されます。
平成19年4月以降に70歳に達し、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務している場合は、厚生年金保険の被保険者にはなりませんが、65歳以上と同様の支給停止が行われます。
高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付には、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金があり、
以下の要件に該当する場合、雇用保険から本人に対して支給されます。
・雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること
・60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者であること
・60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下したこと
高年齢雇用継続基本給付金は、60歳到達後も同じ会社で働き続ける者(または
雇用保険の失業給付基本手当を受給せず他の会社に就職した者)に支給されます。
高年齢再就職給付金は、60歳以後に失業給付基本手当を100日分以上残して再就職した者に支給されます。
高年齢雇用継続基本給付金の支給額の計算方法
60歳以上65歳未満の賃金が、60歳到達時点の賃金の | 支 給 額 |
61%以下に低下した場合 | 各月の賃金の15% |
61%超75%未満に低下した場合 | 低下率に応じて各月の賃金の15%未満 |
75%以上の場合 | 支給されません |
高年齢雇用継続基本給付金の支給には限度額があり、各月の賃金が344,209円未満であることが必要です。この限度額は毎年8月1に改定されます。計算された支給額が、1,864円以下の場合には、支給されません(平成23年8月1日以降)。
高年齢雇用継続給付と在職老齢年金を同時に受給できる場合、高年齢雇用継続給付の給付額に応じて、在職老齢年金の一部が支給停止されます。これは給与の額に応じて年金が支給停止されるのとは別の仕組みです。最高で標準報酬月額の6%に相当する額が支給停止され、以下高年齢雇用継続給付の給付額の減少に応じて徐々に少ない額になります。
在職老齢年金と高年齢雇用継続給付を利用した賃金設計
在職老齢年金と高年齢雇用継続給付を利用することにより、給与をある程度ダウンさせても、本人の手取り額がそれほど減らないようにすることができます。在職老齢年金も高年齢雇用継続給付も、給与が高くなるほど減額される仕組みとなっています。本人が受け取れる年金月額などの要素からシミュレーションを行い、手取り額が最適となるような給与設計をいたします。
賃金 + 在職老齢年金 + 高年齢雇用継続給付 = 最適な手取り額
高年齢社員の労働時間を社会保険の適用基準に満たないよう設定することにより、結果的に会社負担を減らし、本人の手取り額を多くするようなことも可能です。
高年齢社員の給与設計については、企業だけでなく本人の意向を反映させなければならないケースも多く、年金や社会保険料などの要素も考えるとたいへん複雑です。
高年齢者の働く意欲と企業のコスト削減を両立させる最適な給与設計をご提案いたします。ぜひご利用ください。
高年齢者対象の助成金
(1)特定求職者雇用開発助成金
新たに高齢者、障害者、母子家庭の母親など、就職が困難な者を雇い入れた場合に支給されます。高齢者については、雇い入れる日の満年齢が60歳から64歳のひとが対象となります。
(2)高年齢者雇用開発特別奨励金
65歳以上の高年齢者を、ハローワークや一定の職業紹介事業者の紹介により雇い入
れた場合に支給されます。
(3)中小企業定年引上げ等奨励金
高年齢者の雇用確保措置を実施した事業主に対して支給される助成金で、実施した措置と企業規模に応じて、一定額の助成金が支給されます。
(4)試行雇用奨励金
ハローワークの紹介により、①45歳以上の中高年齢者、②40歳未満の若年者等、③母子家庭の母等、④季節労働者、⑤中国残留邦人等永住帰国者、⑥障害者、⑦日雇労働者・住居喪失不安定就労者・ホームレスを正式採用する前に、やる気や適性を見るため一定期間(原則3ヶ月)雇い入れた場合に支給されます。
高年齢者を雇用したり定年年齢を延長した場合、一定の条件のもとで、会社が受給できる助成金があります。これらは、種類も多く、現実的に受給できるものが少なくないので、積極的に利用することをお薦めします。
助成金受給可能性の診断から支給申請手続きまでサポートいたします。
助成金については豊富な実績のほかに、専門誌への寄稿も行っています。
費用については、助成金の種類や業務内容により異なりますが、着手金+15%の手続報酬を目安に相談させていただきます。
高年齢者に適した就業形態
高年齢者を労働力として確保するにあたり、企業は高年齢者のニーズに応えた多様な就業形態を用意する必要があります。
高年齢者向けに、単なる短時間勤務制だけでなく、深夜勤務制・土日祝日勤務制・週3日勤務制などを導入しているケースがあります。
また、高年齢者に適した就業形態として、勤務時間を選べるフレックスタイム制、勤務日と勤務時間を選べるシフト制、自宅で業務を行う在宅勤務制などが挙げられます。
これらは、すべての企業や職種で導入できるわけではありませんが、高年齢社員に適した就業形態として検討してみてはいかがでしょうか。
フレックスタイム制は出退勤時間が自由になることから、在宅勤務制は通勤がないため肉体的負担が少ないことから、高年齢社員からの希望が多い就業形態です。
これらの制度を導入するには一定のルールを就業規則などに定めることが必要です。
高年齢者に適した就業形態の導入
高年齢者のニーズに応えた多様な就業形態を用意するお手伝いをいたします。
短時間勤務制だけでなく、深夜勤務制・土日祝日勤務制・週3日勤務制などを導入
についての雇用契約書や規程の作成のアドバイスをいたします。
高年齢労働者から要望の多い就業形態であるフレックスタイム制、シフト制、在宅勤務制の導入についてもご相談ください。
高年齢者雇用についてのご相談は
「要点解説 高年齢者雇用の実務」執筆
「65歳雇用」が義務化されるにあたり、高年齢者の活用は企業の大きな課題となっています。本稿においては、高年齢者に能力を発揮してもらうための雇用管理だけでなく、企業の人件費負担を抑制するための賃金設計や公的給付・助成金の要点解説もしています。